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- 〜私とインド万年筆との出会い〜
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私が現地インドの事務所で主に使うのはヒンディー語です。日本語と文法が似ているヒンディー語は英語よりも意外と親しみやすいため、私はヒンディー語をよく使います。見たことのある人なら分かると思いますが、ヒンディー文字は漢字のように独特の丸みや直線を帯び画数が多いです。だいぶん慣れましたがやはり、インド人のように「もっとスピーディーにきれいに書きたい!」とよく思います。
以前、職場の友人(インド人)が何百枚ものサイン(署名)をすらすら流れるように書いていて思わず見入ってしまいました。ふと、さっきから彼の手の先で光っているきらびやかなシルバーに目が留まりよく見てみると、ペン先に人の彫像もされています。美しい。思わず心の中でつぶやいてしまいました。「きれい」よりも「美しい」という言葉のほうがより似合っている印象でした。何気なく興味本位で彼の万年筆について聞いてみて、おどろきました。意外にもインドの万年筆には心が熱くなってしまうような深い歴史があったのです。
歴史に詳しい彼の話を聞いていて、その万年筆に秘められたストーリーに思わず聞き入ってしまいました。一見何気ない一本のペンが、私にとって意味を帯び始めた瞬間でした。少し、彼の話を要約して皆様にも是非お伝えしたいと思っています。日本ではあまり知られていないインドのこと、もっと多くの方々に知ってもらいたい。その価値やあふれる熱を共有したいです。そういう思いでこのサイトも立ち上げました。少し堅いところもあるかもしれませんが、なるべく噛み砕いて書きます。
- 〜インド万年筆のはじまり〜
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突然ですが、「スワーデーシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
学生のときに学校で習ったことがあるかもしれません。簡単に言うと、これは、インドが当時植民地支配されていたイギリスをはじめとする海外の品物を買うことをやめ、自分の国つまりインド国内の資源を使い、インド国内で、インド人の手によって作られたものを買おうよ、という運動です。
これが、20世紀初頭の話なのですが、なんと実はこの運動とインドの万年筆と大きな繋がりがあるのです。
- 〜イギリス植民地時代〜
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インドは、19世紀初頭からイギリスの植民地とされていました。その頃から、イギリスとインド間の貿易が自由化されもののやり取りが活発になり、イギリスからは、機械製綿織物がたくさん流入していました。それによって、それまで栄えていたインドの伝統的な綿織物産業は破壊されました。
しかし、さほど働かなくても以前に比べればイギリスのものが楽に手に入り、とりわけ困るということもなく、中にはそのほうが幸せな人も多くいたでしょう。実際、当時、インド人の多くがインドはイギリスの植民地と思っていなく、イギリスはあくまで自分たちの一部、と考えていたといいます。職場の友人もそう考えているそうです。主従関係でなく、あくまで対等、という考えです。
- 〜ガンジー登場〜
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植民地化されたままのインドに大反対を唱えた世界的に有名な歴史的重要人物がいます。それが、かの有名なマハトマ・ガンジーです。マハトマとはヒンディー語で「偉大なる魂」という意味でガンジーの尊称です。
彼は、1937年から1948年の12年の間に、なんと計5回もノーベル平和賞の候補に挙がっていたのですが、一度も受賞したことがありません。インドの歴史を支えてきたインドに無くてはならなかった大切な人物の一人です。
そして、その彼マハトマ・ガンジーが当時のインドの状態を見ておかしいのではないかと疑問を抱き、彼が先頭に立ちながらイギリスからインドの独立運動を始めます。
- 〜真の幸せ〜
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ガンジーの考えはこうです。
「私たちは他の国の勢力によってあっけなくこれまでの誇るべき生活様式を投げ出してしまってはいけない。これまで祖先が築いてきた素晴らしい文化やインド人の良さを西洋の文化によって失ってしまってはならない。このままだと、インドは外国からあらゆるものを大量に輸入しないと、食べることさえできなくなってしまうだろう。私たちは自分の手足でできることをしなければならない。手足を使うことにこそ真の幸せがあって、そこにこそ健康があるのだ。もっとも貧しい人々ですら、自分たちの発言が国家の建設に役立っていると考えるようなインドに、国民に上下のない階級のないインドに、すべての共同社会が完全な調和のうちに存在できるようなインドになるために」(※1)、というものです。
そう、彼が、万年筆つくりに大きな影響を与えた人物なのです。
※1 『真の独立への道―ヒンド・スワラージ M.K.ガーンディー (著)』 田中 敏雄 出版社: 岩波書店 出版日: 2001/9/14 より引用
- 〜「人のためになるものを作るように」 by ガンジー〜
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たくさんの書物を出版してきたことで有名なガンジーだが、その際に使う文具もインド国産のものにこだわっていたといいます。ある時、彼は、石版印刷板の作業に携わっていたM.V.ラトゥナム氏に「人のためになるものを作るように」と諭しました。
ガンジーの言葉を噛みしめた彼ラトゥナーム氏はなんとその後約10年もの月日をかけて純国産の手作りペンを製作し、その万年筆をガンジーに贈ったそうです。
その出来栄えは勿論のこと彼の長年の努力に感銘を受けたガンジーは、そのペンで御礼の手紙を書いたといいます。その後も彼ラトゥナム氏の万年筆はネルーやインディラ・ガンディーなどの政治家にも愛用されていたといいます。
- 〜内に秘める真実〜
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ガンジーは、何事においても、過程というものが出来上がった製品(結果)と同じくらい重要であると考えていたといいます。それは、その過程が人の道から外れたものや、倫理にかなっていないやり方で行なわれたものならば、その結果(出来上がったもの)がどんなに見栄えが良くても、それは価値に値しない、という意味であるといいます。
ガンジーの有名な言葉に次のようなものがあります。「自分がこの世の中で見てみたい変化に、あなた自身が成ってみせなさい」「皆がそう言うからと言って間違いが真実にはならなければ、誰も見ていないからといって真実が間違いにもならない。例え大衆の支持無くとも、真実は立ち上がる。真実は自立しているから」。これこそ、まさにインドのスワデーシー運動(自国産品愛用運動)にガンジーが込めた思いであるというのです。つまり、貧しい人々ですら、自分たちの意見が国家を築いていく助力になっていると考えるようなインドになるよう、何億もいるインド国民それぞれが自分のできることを自分の手足を使ってする、ということです。貧しいから、権力がないからといってあきらめ人任せにするのではなく、「あなたは何ができるの?」と聞かれれば「私はこれができる」という自分自身の特産品を持つ。それこそが、他に頼らない自立したインドの根強い発展に繋がるのだ、と。
そして、その品は雑なものでなく、最高のものでなくてはならなりません。最高のものとは、その過程が出来上がりに等しく美しいこと。誰も見ていないから分からないだろうと言い理不尽で野蛮なやり方でつくるのではなく、自分の中で至高のやり方で作ること。そのようなものは、誰言わずとも世の中で価値が自ずと認められるようになり長く重宝される、という教えです。
その最たる例が、そう、もうお分かりの通り、今も尚価値がさらに増し、内に秘める真実によって人々を惹きつけ続ける、ラトゥナム万年筆なのです。
- 〜手作りにこそ美がある〜
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私もラトゥナム氏のその手作り万年筆を愛用しています。「手作り」ということを回想しながら様々な角度でペンを握りなおし、横から下から先端からと、いろいろな方向から眺めてみる。キャップをはずし、カチッとまたはめてみる。ペンを包む素材をその感触を確かめるごとく指の腹で軽くこすってみる。温もり、オリジナリティ、唯一感とはこういうことをいうのか、と思わず感じさせる深みがあります。世の中には星の数ほどものが溢れていているとは言え、やはり一所懸命に作られた「手作り」に敵うものはない、そうはっきりと言えるまるで魂の宿ったような「手作り」がここに在ります。
- 〜新たな価値〜
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手つくりのものを誰か大切な人へ贈ったことがあるでしょうか。作っている間中、相手が喜ぶ顔や使う様子を想像しながら作る。工程の最初から最後まで、制作者の手や目、気持ちが離れる時間はない。自分の作品が誰かに愛され、認められる幸せ、使う人が喜ぶ顔、誰かにプレゼントをする人の気持ち、それらをいつも心で思い浮かべながら作る。誰かの喜びや幸せに懸けて自分の中で至高の思いで取り組む。それが魂を込めるということです。そのような過程が機械工程にあるでしょうか。魂を込めるということ、それこそが人を感動させるのです。制作者もそれを持つようになる人を想像し、持つ人も制作者を想像する。
どのような所で、どのような思いで、どのような苦労があってここまで辿りついたのか。数字や言葉では表現できない雰囲気、作った人と持った人の間にのみ存在し感じられる何かがある。この広い世界で、逢ったことのない人と自分が出会える瞬間です。一本のペンによってひとつの糸で繋がっていられる。そこに新たな価値が生まれる。 手作りのもの。そこにはきっと人を感動させることができる目に見えない価値が凝縮されています。
- 〜生きているストーリー〜
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あのガンジーが諭したラトゥナム氏が作ってくれたペン。彼が魂を込めてくれたペン。そのペンを持っているだけで、なんだかインドのあの独立運動の時の情熱がペンの中に見えてきそうだ。万年筆というそのモノに秘められた歴史、思い、そのペンで書く線一本一本に意味が溢れてきます。
当時のガンジーをはじめとするインドの独立運動の時の様子やラトゥナム氏が試行錯誤しながら妥協せず悩み作る様子がペンを走らすごとに文字の一画一画にストーリーのごとく刻まれていきます。ペンの内に共に込められた彼らの命が、思いが、情熱が、線となってここで新たに力強く生きている。再び命を与えられたかのように。
- 〜ペンケース物語〜
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このインドのラトゥナム氏による万年筆には鮮やかなマドラスチェック柄のペンケースに入れてさらに味わいを深めていただきたいです。マドラスチェックといえば、タータンチェックなどと同様イギリスのブリティッシュなイメージをする人がほとんどかもしれません。しかし、実はマドラスとはインドの地名から来ており、インド発祥の生地のことです。マドラスは南インドの現在のチェンナイ州にあたり、実はなんと江戸時代の日本のあの桟留縞の伝来元でもあるというから驚きです。ちなみに桟留(さんとめ)という言葉も実は日本語ではなく、インドのサントメという町の名前から来ています。当時サントメ町を築いたポルトガル人がポルトガル語でその街をSao Thomeと命名したことが起源であるといいます。
- 〜ブリティッシュファッションへ〜
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17世紀後半〜18世紀における主要交易品は綿布だったのだが東南アジアや日本、ヨーロッパ諸国で大量に需要されていました。
それを機に南インド産の綿布はアジアやヨーロッパの各地にファッションの変化を引き起こし、南インド産綿布への異常なほどの渇望「キャラコブーム」が巻き起こりました。
パリやロンドンの貴族に広く愛用されたりと文化的影響ももたらしていたといいます。やがてはブリティッシュなファッションの一部となり現在私たちの多くが持つイメージに近づきます。
- 〜マドラス綿布の人気〜
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しかしなぜこれほどまでもマドラスの綿布は世界中に広まり、長い時を経て現在もなお愛され続けているのでしょうか。理由の一つは、職人の高い技術による繊細さと品質の良さであると思われます。南インド産の木綿地は職人たちの手によって独自の手法で艶出しや糸作りが行われており、糸の細さにはじまり色・艶・肌ざわりとほとんど絹と変わらないほどのしなやかさを持っていたといいます。また当時日本では生産できなかった驚異的長さの非常に細い良質の糸を使って縦縞が織られ、その織り方も2本ずつ引きそろえた細い双子糸を経・緯ともに織り込むという他には見られない織り方だったといいます。
- 〜ガンジー此処にも在り〜
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職人の技術による品質や価格の安さという魅力に加えて、今もなお愛され続けているのには私はもう一つ理由があるのではないかと考えています。この綿布生産においてもガンジーの思想が見られ、綿布生産におけるインド人の意志や取り組み過程の素晴らしさが今もなお世界中の人々を惹きつけ続けているのではないか、ということです。
綿布職人たちは綿糸から綿布の生産工程では、様々な職能・技術に特化した専門の職能集団に分かれていた」(※2)といいます。「各工程では、それぞれ紡糸職人、洗浄職人、織布職人、捺染職人、糸染職人、職人頭などそれぞれ独自の職能と職人集団組織を維持していた」(※2)そうです。
他に頼らず、インド国産の綿花を使い、自分たちの手足でできる技能を身につけ職人となり、妥協せず最高の品質まで仕立てあげた。手作りにこそ美があり、自らの手足でできることにこそ健康があり、本当の幸せがある。小さな村人の力も世界各地で文化的変容をもたらすほどの偉大な変化の助力になっている、「人のためになるものをつくるように」というこれらのガンジーの思想が含まれている。それが自然と目に見えない形で私たちを魅了し続けていると思わせる深みがあります。
※2 『マドラス物語―海道のインド文化誌 』重松 伸司 出版社: 中央公論社 発売日:1993/6 より引用
- 〜About ワンチャ〜
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今日の文具は、単に勉強や仕事の中での単なる道具にとどまらず、深く生活に関与し生活を彩るファッションとして進化しています。
私どもTHT.incのステーショナリー部門Wancherは、様々に変化していく時代の中でその時代のニーズにあった品を、その時代にあった方法で提供することにより、グローバル化を果たしつつ、文具販売の進んでいく方向を示す方位計の役割を果たしてきました。
学校、会社、自宅、通勤、通学、一日の生活のどの場面において、文具はいつも身近にあります。
Wancherでは、いつも身近にある文具の提供から、新たなライフスタイルの提案を行い、日常の生活の中でわくわくする気持ちや、心地よい気持ちを感じていただけるような、満足感を提供する会社へと変わりつつあります。
Wancherは、文具をファッションの一部と考え、全体を一律の価値観に基づいてコーディネートし、そのファッションスタイル全体を提案することにより、明確な経営理念とビジョンを示してまいります。
我々の、提案するファッションに共感いただいた方に、その商品を買って頂く、そして、使って頂き納得して頂く、それをお客様との間で積み重ねていくことで信頼を築いて行きたいと思います。
いま私達を取り巻く環境は、物や情報が溢れ、世界のどこにいようとも瞬時に情報やモノを得ることが出来ます。
そんな中で、多くの情報やモノに埋もれてしまい、本来の価値が付けられないまま隠れてしまっているモノも多くあります。私達はそのようなモノを見つけ出し、育て上げていきたく思います。
すでに固定概念が備わっているなら取り払い、そのモノが持つ本来の魅力と価値を研ぎ出し、時代に合わせ柔軟にモディファイしていく。国籍も歳の隔たりも無く世界中の人々に提案していくことこそがWancherのスタイルです。
いつでも、どんなときでも、前向きで、何にでも興味を持ち、わくわくしながら、感動して、、こだわりを持って興味を追究していく。その気持ちが伝わり。普段の日常の流れる時間を、良質な時間と感じてもらえる、そんな時の過ごし方が生まれる一助になりたいと思います。
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